今から30年ほど前、その当時は当たり前ではなかった【できちゃった婚】により、妻から、もうクルマは止めてよと。貯めてきた貯金からお金出すから。
クルマが大好きで仕方なかったが、子供が生まれたことだし、もう峠に行くのはやめよう!と、断腸の思いで、その状況に見合ったクルマ選びをするか。仕方ないな。
当時、私が初めて新車購入するにあたり、条件を考えてみた。
①ファミリーカーらしい車
②妻も運転できる車
③残念だけど、オートマ車
④ゆったりと乗れて、たまに荷物も載せられる車
⑤狭い道も多い横浜では、5ナンバーを超えない車
⑥座高が1Mあるので、頭上が窮屈でない車
⑦箱根へ行きたくなくなる車(頑張っても、それほど速くなく、ノンターボ)
⑧予算200万円程度(今と違って、当時はまだ車が高価すぎなかった)
⑨営業車としても使える車
⑩乗車人員にとって安全な車
⑪妻には内緒で、少しだけワクワクする車
以上を満たしたうえで、あまり気乗りはしていなかったので、適当にクルマ選びをしました。
あとは、消去法をすれば良いだけなので簡単でした。
消去法:
①FF車全盛時になりつつあったなか、当時はまだハンドリングが不自然に感じていたFF車は無し
(FR車にしか乗ってこなかったので)
②かといって、FR車で、頭上の高い車は、オフロード系か今で言いうところのSUⅤばかりで興味なし
上記から、ごく自然なフルタイム4WDで、理想的な低重心で、左右でシンメトリーな車。そんな都合の良いクルマがあった。
SUBARU レガシィ(2代目)ツーリングワゴンのターボ無し。頭の部分から背が高くなっている。
初代レガシィで定評のあったEJ20形エンジンだし。
現金200万円を握りしめ、スバルの店へ行き、早速値引き交渉。お金が無い時期だったので、必死でした。
いくら値引いてもらったかは、近頃の人が聞いたら怒るので、言いません。でも頑張ってくれた。
さて、納車されてから、何か違和感がもの凄い。
車両重量1,460㎏を考慮しても、何かエンジンの回り方が、どん臭いというか、鋭さのかけらも感じられない。
ふと、お店で帰り際に伝えた事を思い出しました。
『カムシャフトはカムシャフトは、2本付いてるやつね!』
そうだったのか・・・。
何も調べずに行き、カタログも見ずに決めましたが、大間違いでした。
確かにカムは2本付いている。
間違ってはいない。
シクジッた!
水平対向エンジンゆえに、DOHCなら、左右両方に、2本づつのカムで合計4本なければいけない。
レシプロ4気筒ばかり乗ってきたので、カムが2本と云えば、当然DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カム)の事だろうと、少し格好をつけて、伝えたのが間違いでした。
つまり、1気筒当たり4バルブながら、左右にカムが1本づつのSOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カム)
その時の営業マンが、星型エンジンを得意とする、中島飛行機の流れを汲む富士重工の技術の人だった為、話が通じやすいなと過信もしていました。
結果、最重要事項だった、⑪妻には内緒で、少しだけワクワクする車 の夢は儚く散りました。
ところで、代車のインプレッサ1300ccを乗ったときは、非常に驚きました。
何だ、この車体剛性は。バランスが抜群に良く、危険ではない程度にオーバーステアの味付けの為、軽量ボディでたかだか1300ccながら、非常に気持ちの良いクルマで、しかもFF車、こちらの方が私には面白かった。
インプレッサが、進化したEJ20GベースエンジンでWRCラリーに参戦し、上位入賞した際は、それはそうだろうと、内心思っていました。車体・エンジンともに、ベースが良いし、スバルのラリーの歴史は古く、レガシィのご先祖様のレオーネが、日産、トヨタに隠れがちでしたが、クラス優勝を何度かしている頃を覚えています。チーターやライオンなどの、4本足駆動の動物は速いから、4WDは速いんだとは聞いていましたが、総合優勝までの道のりは長かったので、それが実証された時は、とても嬉しかった。スバルが経営的に大変な時が長かった中、水平対向エンジンと、AWD駆動にこだわりながら、細々ながらも続けてきただけに、拍手喝采の想いでした。
私のレガシィちゃんは、そうはいっても、とても素直な乗り味で、走りに安心感があり、気持ちの良いハンドリングでした。ただ、スバリストの沼の片鱗も感じました。燃費が非常に悪く、オイル漏れまで時間はかからず、維持費が少々高額。若いサラリーマン時代で稼ぎも少なかったので、あまり遠出も出来なかった。
普段の足は、燃費が良く、小回りの利く、軽自動車が多かった。
故に、13年ほど乗り続け、7万㎞強で、お別れすることに。(かなり昔の話)
最後に、少し鞭を入れてみたところ、実はヤバかった。
4速ATでフルノーマルのSOHCなのに、勝手に慣性ドリフトしてくれ、実に思い通りのラインで気持ちよく走れ、前を走る走り屋さん達が、気が付けば、道を開けてくれる。
やはり、DOHC、レガシィB4、ターボ付き、ましてやインプレッサWRXだったら、内緒で山へ行き、操り切れずにこの世にはいなかったことでしょう。気持ちが良いクルマは、自分と、クルマの限界まで走らせたくなってしまうから。要は、重いながらも、ポテンシャルが高い車だったのですね。
レガシィちゃん、そしてSOHC EJ20エンジン。
今後も交通ルールを守り、絶対スピードは遅くても、気持ちの良いクルマを選びます。今現在、サーキットや山へ行かれる車を持っていませんが(笑)。次は絶版車の農道のポルシェかな。